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平成20年度障害者自立支援プ ロジェクト総括会議の報告 その5

「インクルーシブな著作権元年に向けて」
障害者放送協議会著作権委員会委員長、 井上芳郎

私は、「全国LD親の会」の立場で、この障害者放送協議会著作権委員会に参加しています。

去る3月10日に、著作権法の一部を改正する法律案が閣議決定され、今、衆議院にあがっています。ただ、残念ながら、まだ審議入りはしていません。

配布資料では2010年1月1日の施行「目標」とありますが、「予定」と直してください。本国会で100%可決成立すると多くの人は信じています。詳しくは、このURLで新旧対照表、改正前、改正後を見ることができます。Googleでも検索すれば、引っかかってくると思います。

著作権法は、なじみがあるようで、ない法律です。権利制限による情報保障ですが、これは誰の権利を制限するのか。著作者の権利を制限します。例えば、複製(コピー)を、著作者に無断ではできませんが、障害のある人などが利用するために、例外的にそういう規定が設けられています。また、公共図書館や学校教育等でも、認められています。ただ、日本の場合、この規定の幅が非常に狭く厳しく作ってあり、諸外国に比べて範囲が狭くなっています。

アメリカでは、1996年だと思いますが、ヨーロッパもそのあと、アジアでも韓国などではもう改正されたそうです。それらに比べると、非常に狭い範囲の人にしか配慮していないものです。今年1月、文化審議会著作権分科会報告がやっと出ました。そこでは「対象とする障害種を視覚障害や聴覚障害に限定しない」と明確に書かれています。

もう1つ、複製等の主体、誰が複製するか。それから方式。ここから先はいいことが書いてあると思いますが、「必要な方式により複製できる」と。例えばディスレクシアの方には、それに適した方式。いろいろな方式があります。当然、ここには、DAISYのようなデジタル方式も入っていると。

法改正のポイントとして、いくつかあります。

1つは、利用者拡大。

「視覚障害者」を「視覚障害者等」

「聴覚障害者」を「聴覚障害者等」とつけて、その「等」の中に、ディスレクシアの方などを含めていく。

それから、複製等ができる主体。

点字図書館などしかできないものを、それをもっと広げましょうということです。また複製の方式を録音等に限定しない。これも、それぞれの「必要な方式により複製できる」。

具体的には、法律の条文で言うと、第37条、第37条の2、そこが大きく、ほとんど全面的と言っていいぐらい改正になるわけです。今日の話で言いますと、37条の1項・2項・3項とあるのですが、この3項目が特に関係が深いと思います。ここは、視覚障害の方にどういうことができるかと書いてあります。すなわち録音ができるということやインターネットなどでできる公衆送信のことなどが書いてありましたが、その部分を視覚障害者等にも広げる。今までは視覚障害者だけだったのを「など」をつけて範囲を広げました。

それで、「視覚障害者等」の中身ですけど、法律の条文をそのまま書きました。これはどういう人をさすのか。1つ困ったのは、上肢麻痺などで本のページが手でめくれないような人は、この定義にはうまく入ってこないので、文化庁著作権課にも申し入れしています。ただ発達障害児者、ディスレクシアなどの方は、ここに明確に入ってきます。

著作物を新たに定義しました。

「視覚著作物」これは、目から入った情報で理解できる著作物ということですね。音声化できる、と今までは「録音」といっていましたが、「音声化」と言い換えています、これはいろんな理由があります。自動公衆送信、インターネットで送信できるんですね。今までは視覚障害の人の点字データと録音データだけでした。DAISY等のデータを公衆送信できると理解できるわけです。その人に応じた方式でできるということです。

複製などできる主体。

今までは点字図書館に限定されていたのですが、たとえば一般の公共図書館であるとか、大学の図書館、これははっきりしないのですが、実績のある例えばNPO法人さんとかでもできるようになる。要するに、範囲を広げてできるようになる。それと今までは貸し出しだけだったんですね。しかしこれからは、譲渡もできる。自分の持っている著作物、つまり本をDAISY化してもらい、もともと自分で買ったものですから、DAISY化されたものも自分で手元に置いておける、当たり前のことですけどね。

そして、デジタル方式なども含み、その人が必要とする方式で複製できること。ただ、1つ、但し書きがつきます。これはどうなのか、実際に法律が動いてみないとわからないのですが、既に出版社からアクセシブルなものが提供されている場合、これは無許諾の対象からはずれます。この辺は、本当にアクセシブルであるかどうかは、実際利用者が決めるべきではないか。これもまた法案が通ってからだとは思いますが、交渉していく必要があると思います。

聴覚障害関係のことにも触れておかないといけないと思いますが、「37条の2」でふれています。ここも全面的と言っていいほど書き直しになります。基本的には、「聴覚障害者等」と、範囲を広げるということと、複製等ができる主体を広げることは、同じなんですけど、たとえば聴覚障害者の場合は、字幕・手話が大切です。たとえば、市販のDVD、今、字幕が入っているのも少しはあるのだと思いますが、手話はほとんど入っていないと思います。そういうものに後から字幕や手話を入れて複製してもよろしいとなります。これは、あるタイプの学習障害、LDの人にとっては利用価値があるのかなと思います。あと、高齢の方もですね。

参考として。第33条の2。教科書です。厳密にいえば、文科省の検定教科書。これに関する規程です。もともとは弱視のお子さんのための拡大教科書を作るための条項を新たにつくったんです。ですから「33条の2」となっています。これが昨年9月17日から改正され、基本的には、誰でもが複製できる。利用目的は限定されています。視覚障害・発達障害、その他の障害により、教科用図書に掲載された著作物を使用することが困難な児童または生徒の学習の用に供するためと。要するに、学校の授業で使うと。しかし教科書というのは家に持って返って予習復習をするので、当然家でも使って良いと。当たり前ですけどね。そういう目的なら、誰でもが複製できる。しかも複製の方式については、今回、著作権法改正案に踏襲されています。

読みます。

(スクリーン参照)

「当該著作物」とは教科書の文字だけでなく、写真や絵など、一切含みます。著作物というのは別に文字の著作物だけではありませんので、付け加えました。

(スクリーン参照)

これはDAISYのような方式も含んで、それを意識してつくられた文言です。これは、実は初代の委員長が河村さんで、私は2代目で、10年ごしで要望してきました。特にマルチメディアDAISY化はメリットが大きいので、著作権法上のバリアをはずしてほしいと要望してきましたが。今回の法改正にそれが受け継がれています。「学習障害」という文言が1999年12月、著作権審議会の答申で初めて入りました。いわゆる特別支援教育が、今は本格実施されましたが、それ以前の話です。その後は遅々として進まなかったのですが、昨年9月、俗に言う教科書バリアフリー法が議員立法で成立し、それと合わせて33条の2が改正され、文科省検定教科書に限って、「前倒し」と言っていいでしょうか、著作権法が改正されました。そして今年3月提出の改正案で、著作権法の本体部分、37条関係がしっかりと法改正されることになります。

まだ法案の段階ですが。あとは国会議員の先生にしっかり審議していただきたい。1日も早く、解散などとも言われていますが、今国会で成立させたいと文化庁は言っていますので、期待していきたいと思います。

次号につづく・・・
IH

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