新規コメントの追加

平成20年度障害者自立支援プ ロジェクト総括会議の報告 その4

「スウェーデンにおける子どもの『読み』の支援」
日本障害者リハビリテーション協会情報センター長、野村美佐子

私は、2009年1月、河村さんと一緒にスウェーデンでは子どもたちにDAISYを利用してどのような読みの支援をしているのかを中心に調査をしてきましたのでその報告をさせていただきます。

スウェーデンでは、1973年には既に著作権法を改正して、視覚障害者以外の人に録音図書を提供しようという動きがありました。どういう人たちが対象かというと、最近よく耳にするプリントディスアビリティ(print disability)をもつ人達です。具体的には、プリントディスアビリティというのは日本語で印刷物あるいは印刷字を読みない障害と訳し、上肢障害のためにページをめくれない人、学習障害、知的障害、精神障害など見えるけれども読めない人達をさしております。

プリントディスアビリティという言葉は、ウェーデンの図書館員が通常の印刷物が利用できない人たちの障害を総称して使いはじめたそうです。そして1991年にスウェーデンでの著作権法での利用を求めたそうですが、プリントディサビリティという言葉の使用は認められず、「印刷されたテキストを読めない障害のある人(A person with a disability that makes him unable to read printed text」と長い言葉が使われているそうです。とはいえスウェーデン語審議会が認めたこともあり、それ以来この言葉が定着しました。

スウェーデンにおけるDAISYを利用した読みの支援に関係する機関としてスウェーデン国立録音点字図書館(TPB)があります。ここではDAISY図書の提供を視覚障害者だけでなく、ディスレクシア等学習障害者に対しても行っております。例えば2007年に2100人の障害がある学生にDAISY図書を提供したのですが、そのうちの70パーセントがディスレクシアだったそうです。しかし、残念ながら大学生対象の無料サービスになります。

義務教育においては、「国立特別支援教育庁」(The National Agency for Special Needs Education and Schools(SPSM))が代替教科書の提供を担当しています。SPSMは、2008年の夏に、国立特別支援教育サポート機関、特別支援教育研究所、ろうおよび難聴の生徒を対象とした支援学校がひとまめになって、特別支援教育について、国のサポートのコーディネートを担うために設立されました。その目的は、児童、青年、障害を持つ成人が平等、参加、アクセシビリティと交友をベースとした教育を受けることを保障することです。DAISY教科書については、合成音声によるDAISY版教科書をTPBに依頼して製作してもらい、購入して必要な生徒に提供をしているそうです。ここの機関ではあまりDAISY製作を行っていないようです。

前述のTPBにおいては、2008年の春の1学期間、リーディング市の子どもに対して、DAISYによる読みの支援について調査を行っています。その調査は、「マルチメディアデイジー図書試用プロジェクト」と呼ばれ、マルチメディアデイジー図書を製作し、学校の生徒に試してもらいどのように適合するかを調べたそうです。対象児童は、読み書き障害、注意欠陥障害(ADD)、発達障害、そして知的障害のある7歳から15歳の普通学校の36名と特別支援学校の16名の生徒でした。実際の調査は、子ども向けの教育関連社であるレークニィッタン社のアニータ・ヒルデンさんが担当しました。このプロジェクトについて、アニータさんとTPBのチルドレンサービス担当のジェニー・ニルソンさんにインタビューをしました。

ジェニー・ニルソンさんによると、このプロジェクトのために、テキストと音声、画像を使ったマルチメディアDAISY図書を6冊から7冊製作して、オリジナルはすでに出版された本を使ったそうです。ストーリーは年齢に合わせて、それほど易しくはないが、スウェーデンではLLブックと呼ばれているや読みやすく・わかりやすい図書を使いました。製作においては、違いのある声で読む、サウンド、写真を利用するなどの工夫をしたそうです。DAISY製作で留意することは、テキストは読みやすく・わかりやすく、しかし、内容自体はエイジ・アプロプリエイト(age-appropriate)と言いますが、年齢に合わせることが重要であると語っていました。

生徒のマルチメディアデイジー図書の利用方法は、生徒が1ページずつ聞き、その後、読み上げを停止して、同じ文章を自分で読み、教師に質問するという方法でした。日本でも同じように、利用者がハイライトする文を読んだ後、ポーズを置いて、自分で繰りかえすことで読む練習をしている生徒がおりましたが、それに似ているところがあると思いました。

再生ソフトはフリーのソフトウェアのAMISと英国のドルフィン社のイージーリーダー(EasyREadr)を利用したそうです。イージーリーダーは、日本でも使っている方もいると思いますが、日本語化はまだされていません。DAISY図書は教室で読んでもらい、利用した生徒に対してアンケートを実地したそうです。その結果、ほとんどの人が、黄色いハイライトがあることで、どこを読んでいるかがわかって良いという報告がされました。先生も同じような意見だったそうです。

また基本的には原本と同じようにDAISY教科書を製作したそうですが、実は画像の扱い方に異論が出たそうです。原本では最初に説明があり、その後に画像で補足するページがありますが、そうするとわかりにくいので、最初に画像をもってきて、あとで説明文を入れたほうが読んでいてわかりやすいと言ったお子さんがいたそうです。日本でも同じような意見がでました。今後の課題と考えています。しかし、このことについて、TPBのジェニーさんは、これは著作権上の大きな問題となり、原本を変えることはとてもいけないことですと語っていたのが印象的でした。

調査担当のアニータさんにもインタビューをしましたが,マルチメディアDAISY図書は、先生から読書トレーニングに効果があるというコメントをもらったと語っています。幼児のコンピュータ使用について話しているうちに、アニータさんが子どもたちのためのコンピュータプレイセンターにプロジェクトに関わっていたことがわかりました。

このプロジェクトについては、2003年に彼女の友人であるビルギッタ・イェツバリィ氏を日本障害者リハビリテーション協会主催の障害者のためのICTセミナーに招聘をしており、その際に子どもたちのコンピュータプレイセンターについて説明をしていただきました。このセンターの詳細については、私どものウェブ(http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/conf/031025/10.html)に詳しくのっていますので、それを見ていただければと思います。

子どもたちのためのコンピュータプレイセンターには、アニータさんの思いやビルギッタさんの「子どもがコンピュータを楽しんで欲しい。」という思いがいっぱい入っていました。たとえばコンピュータは、小さいときには使ってはいけないと話を聞いたことがあるかと思いますが、アニータさんによると、子どもが2歳になるとスプーンと同じようにマウスが使えると言うんですね。だから、その頃からコンピュータを使い始めてもいいんですよと言われました。そしてむしろ障害のある人こそ、幼いときから使っていくことで、情報を得る方法を学んでいくのではないかと言っていました。ただし、就学前ですと、どちらかというと字を覚えるためにコンピュータを使うということではなくて、ゲームを楽しんだり、コンピュータと遊ぶ、それがきっかけとなり、字を覚える頃には楽しく字が覚えられたり、DAISYが聴けるという段階への準備ができると言います。そういう意味で、コンピュータはとても大事だと思います。日本では、養護学校の1教室に1つあるという程度の状況ですが、スウェーデンでは当たり前のようにコンピュータが使われています。

前述のアニータさんは、今でもコンピュータプレイセンターのプロジェクトに関わり、また彼女の教育関連会社を通して、前述のビルギッタさんと障害を持つ子どもたちへのパソコン指導や教師の支援を行ってきたそうです。今後、スウェーデンと日本でDAISYのマルチメディア教科書について意見交換ができればと考えております。

次号につづく・・・
IH

添付サイズ
Image icon 野村さん3.jpg17.8 KB