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平成20年度障害者自立支援プ ロジェクト総括会議の報告 その3

基調講演2
「誰もが読めるように:支援技術とユニバーサルデザイン」
静岡県立大学国際関係学部教授、石川 准

以下抜粋文:
ユニバーサルデザインと支援技術という観点から、誰もが自由に読みたい本を読みたいときに読めるようにしていくというビジョンやミッションを山内先生、河村さんと共有し、一緒に仕事をしています。

読みたいときに読みたい本をタイムラグがなく自分で自由に選択できることを実現するにはどうしたらいいかと、ずっとやってきました。また、「読む」と言っても、自分にとって読みやすいメディアや形式で本を読むことも追及しないといけません。私の場合について言いますと、仕事のための読書は、これまでもっぱら、少なくともここ10年ぐらいはOCRを使って読んできました。光学的文字認識という技術で、スキャナで画像を取り込んで、文字認識ソフトでテキスト化して、パソコンで読む。パソコンでは、テキストデータを音声合成機能を持った画面を読上げるソフトで読ませています。メリットは、読みたい本をほぼタイムラグなしに読めるということです。

ただし、OCRというのは完璧な技術ではなくて、一定の間違いが出てきます。認識の誤りです。
これは本の印刷状態にもよりますし、複雑なレイアウトになっていたりすると、間違えるとか、いろんな問題を含んでいますが、それでも多くの場合は有効です。年間約100~200冊ぐらいの本を電動カッターで裁断して、スキャナにかけて、とにかく、自動処理、バッチ処理でテキストファイルをつくります。
本屋さんでの「立ち読み」みたいな感じで、OCRでテキスト化しないと、その本が自分にとって読みたい本であるか、読む必要のある本であるかどうか、判断できませんので、とにかくまず本をOCRにかけて、テキストファイルにします。

きちんと読まなければならない本、あるいはきちんと読みたい本、ざっとどんなことが書いてあるかを確認できればいい本と優先順位をつけ、さらに構成作業を研究室のスタッフに依頼します。そうやってざっと校正した本を出します。厳密に校正して1文字の誤りもないようにしようとするには大変な労力が必要ですので、多少の誤りはあってもいいという前提でOCRという技術を利用するのははコストパフォーマンス的に優れています。ただし、表や数式の問題、対応音声読み上げの問題などが残ります。

一方、楽しみの読書、趣味の読書は、主として点字図書館・公共図書館のデイジー音訳図書を利用しています。デイジー音訳図書については、昨年、携帯型のDAISYプレイヤーが数機種発売されるようになりましたし、ダウンロードが可能になりましたので自由度が高まりました。今まではオンラインでネットワークにつながっている状態で読書するということでした。ハイスピードのネットワーク環境があるところでは読書ができていたのですが、その環境から離れてしまうと、本の継続的な読書ができませんでした。そうなってくると、郵送サービスでデイジー図書を借りる必要があったわけです。「読みたい」ときに読むにはじれったいことがありました。

このような現状に呼応する形で、著作権法の改正が本国会に提案されています。
それによって、これまで音訳及び点字という2つのメディアに限定されていた著作権法上の免除がそれ以外のメディアにも拡張される見通しになっています。また、視覚障害者に対して適用されていたものを、「読み」に障害のある人全体に広げられるという見通しになっています。

2月20日~22日にかけ、アメリカのBookshare(ブックシェア)代表のジム・フラクターマンや河村さんと静岡や大阪でディスカッションを行い、アメリカの著作権法が1990年代に改正され、電子データによる図書サービスをオンラインで提供し、視覚障害者にとどまらず、印刷物の読みに障害のある人にもサービス対象が拡大していることを話してもらいました。

日本は、それに比べると、従来、点字や音訳データに関しては、著作権法上の除外規定がありますが、電子データについては、今まで特別な配慮がなされていませんでした。それが、従来の点字図書館のサービスに、電子データが含まれていなかった大きな理由ですが、それだけでは必ずしもないように思います。日本の場合、就労支援、教育支援よりも、一般的な趣味・余暇、生活の質を高めるための読書をサポートするのが、社会福祉施設である点字図書館の中心的な使命でしたので、音訳データを中心としたサービスが提供されたというふうにも考えられます。

また、あとの議論にもなりますが、著作権法上のボトルネックが解消されると思ってただちに電子データによるサービスが広い範囲で始まるかどうかというと、これはニーズしだいです。人々が電子データで本を読みたいというニーズをたくさんもっていて、それを、サービスを提供する機関に訴えて、希望を出していくかどうかにかかっていると思います。

次に仕事に関して活用するテキストを使った読書とその利点についてお話しします。
1つは、いろいろな読み方ができます。連続してずっと読ませることもできますし、段落単位で読ませる、あるいは文、文節単位、1文字単位で読ませることもできます。あるいは、漢字を確認するために、もっと詳細な読み方もできます。あるいは、クイックナビゲーション、見出し移動、これは音訳データでも、DAISYならばできます。あるいは文字列検索をして、その結果に基づき、ナビゲーションすることもできます。さらに、メモ書きを中に入れたり、あるいはしおりを挟んだりということもDAISYならできます。

難解な文章の場合の「編集読み」もできます。本に能動的に働き掛けながら(印刷物であれば鉛筆やマーカーを使った読み方)読めます。そういう意味で、電子データによる読書には、様々な利点があり、それを進めていきたい。その上での原動力になる新しいニーズを持った人として、学習障害の人たち、あるいは、ベッドに寝たきりになっていて、普通の本をページをめくりながら読むのはしんどい、でも、ディスプレイに表示しながら、マウスやスイッチで1つ1つページをめくりながら読むのであれば読書ができる。そういう人たちの新しいニーズに対応して、電子データによるサービスを今後進めていけるのではと思います。

「ユニバーサルデザインと支援技術」という本日の本題ですが、この2つをうまく協力してやっていくのが、アクセシビリティを進めていく上では非常に重要です。
本のバリアフリー化について、ユニバーサルデザインがどういうことを意味するかと言うと、できるだけ上流、つまり出版社が本を作る段階で、ユニバーサルデザインに基づいて本を作っておいてもらえると、あとでいろいろなことが効率よく合理的に行うことができます。ワンソ-スで多様なニーズに対応していく意味でも、上流でユニバーサルデザイン化していくことがとても大事だと思います。OCRなどは、紙になったものをもう一度上に戻すわけですから、できるだけ、コンテンツが作られる場所で、ユニバーサルデザイン的な仕組みを中に入れてもらうほうが合理的です。そのためには、できるだけ出版社がユニバーサルデザイン化を進めたいと思うようなインセンティブ、動機付けを提供しつつ、一方で法律やガイドライン上でのコンセンサスを作っていくのが必要かと思います。

最後になりましたが、教科書をデイジーテキストでつくる、これを進めて行かなくては行けないと、先ほどの基調講演1でもありましたが、その通りだと思います。教科書というのは、出版された本の中でも、難易度の高いものです。デイジー化作業の途中で様々な問題が表面化します。出てきた問題に対応して、DAISY自体は進化するということが大事です。実際にすべての人にデイジー教科書をつくって実際の学習に使ってみる、使いながらフィードバックする作業が必要となります。

次号につづく・・・
IH

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